うん、と小さく頷いて、私はまた海へと目を向けた。

今日の命を終えようとしている太陽は、最後にありったけの輝きを放つかように真っ赤に燃えている。

その光を受けて、海も空も雲も砂も、世界の全てが目も眩みそうなほど鮮やかなオレンジ色に染まっていた。


頭をずらして、優海の胸に耳を寄せる。

優海の鼓動が、私の鼓膜を優しく揺らした。

こうやって彼の胸の音を聞くのが私は昔から大好きだった。

温かくて、優しくて、安心して、泣きたいくらい幸せだ。


私は目を閉じて、心の中で優海に語りかける。

絶対に彼には聞こえないからこそ言える、たくさんの想い。

涙に滲む目で夕陽を見つめながら、その中のいちばん大事なことだけを、言葉にして彼に伝える。

「ごめんね、ありがと。優海、大好き」