「……こんな話、よく信じる気になったね」

ぽつりと言うと、優海は不思議そうに首をかしげた。

「当たり前じゃん。凪沙の言うことなら何でも信じるって言っただろ」

私はふっと笑って彼の頬をむにっとつねる。

「優海は私のだけじゃなくて誰の話でも信じるじゃん。前も言ったけどさあ、そんなんじゃいつか悪いやつに騙されちゃうよ?」
「いいよ。そのときは凪沙が助けてくれるだろ」
「……ったく、他力本願だなあ」
「そのときのためにも、凪沙がいなくなったら困るから。明後日は全力で助けるからな!」

私は「バーカ」と笑ってうつむいた。

『俺が凪沙を助ける』。

その言葉がどれほど嬉しかったか、優海には分かるだろうか。

私の話を聞いたら、彼ならそう言うかもしれないと、予想はしてしたけれど、実際に迷いなく真剣に言ってくれるのを聞いたら、震えがくるほど嬉しかった。

優海が言うと、本当に助かってしまう気がするから不思議だ。

それは優海が、本当にまっさらな気持ちで私を助けると言ってくれていて、心の底から私が助かると信じきっているからなんだろう。

彼の言葉を聞いていると、その温もりに包まれていると、私がもうすぐ死んでしまうなんて、やっぱり悪い夢にしか思えなくなってくる。

「凪沙がいなくなったら困る。生きていけない。だって凪沙は、俺のかたわれだから」

優海の指が、私の胸許の桜貝にそっと触れた。

「だって、約束しただろ? 俺と凪沙は、貝殻のかたわれみたいに唯一の存在だから、絶対に離れないって。一生一緒にいようって」

桜貝の約束。

将来お互いの身に起こることなんてなんにも知らなかった、幼くて純粋だった私たちが見つけた幸せの貝殻。

それを迷いなく私にあげると言った優海に、私はその半分を渡した。

一緒に幸せになればいいでしょ、と言って。

優海が鳥浦に戻ってきて、好きだと告白されて、付き合うことになった。

そのとき、この砂浜でお互いの貝殻を交換して、『一緒に幸せになるために、永遠に一緒にいよう』と誓った。

「あの約束を守るために、俺は凪沙を絶対助ける。だから、これからもずっと一緒にいてよ……凪沙」