優海の顔を見上げると、まっすぐな瞳が、穏やかな笑みを湛えた唇が、柔らかい頬が、オレンジ色に染まっている。

振り向くと、大きな大きな夕陽が水平線に沈もうとしていた。

綺麗だな、と見つめていたとき、ふいに背後から抱きつかれた。

「安心して、凪沙」

優海が私の肩口に顔を埋めて、ぎゅうっと腕に力をこめる。

「絶対に、凪沙を死なせたりしないから」

私は目を見開いて後ろへ視線を向けた。

うつむいた優海のふわふわの髪が、海風に踊っている。

「もう怖がらなくていいからな。俺が絶対に凪沙を助けてやる」
「……何言ってんの。私はもう死ぬって決まってるんだってば」
「いや、死なない。俺が助けるから。何がなんでも凪沙を死なせたりしない」

私は言葉を失った。

優海が顔をあげて、まっすぐに私を見た。

それから頬を寄せて、決意に満ちた声で言う。

「祭りの日に溺れちゃう子を、溺れないように注意すればいいんだ。それでも溺れちゃったら、俺が潜って助ければいい」
「………」
「凪沙を助けるためなら、俺はなんでもやる。絶対に死なせない。凪沙を怖い目になんて遭わせない」

私は海のほうへと視線を投げた。

とろけそうな夕陽が、じわじわと滲んでいく。

頬を伝う涙は温かかった。

「もう苦しい思いなんてしなくていいよ……。だから、安心して」

ありがと、と私は小さく言って、優海に頬擦りをした。