記憶の中にあることが現実になるたび、確信を深めるとともに、だんだん怖くなってきた。

もうすぐ死ぬのだと、またあの苦しみを経験しなければならないのだと思うと怖くて、夜中うなされて何度も目が覚めることもあった。

死ぬまでの時間を、優海ともう一度ちゃんと過ごせることが嬉しい一方で、怖くてしかたがなかったのも確かだった。

「偉かったな」

ぽんぽん、と背中を撫でる優海の掌の温もりを感じた瞬間、涙腺が崩壊したようにぶわっと涙が溢れ出した。

「怖かったのに、俺のために頑張ってくれたんだよな。ありがとな、凪沙……」

違う、優海のためじゃない。

私は自分のためにやったのだ。

優海を残して死ぬことが我慢できなくて、せめて優海の私に対する依存を軽くしてから死にたいと思ったのだ。

そうじゃないと死んでも死にきれないと思ったから、自分の後悔を少しでも減らしたくてやったのだ。

自分が嫌な思いをしないため、結局は自分のためだったのだ。

だから、優海のせいじゃないよ。

そう言いたかったけれど、次から次に溢れてくる涙が邪魔をして、声にならなかった。

私は子どものように大声をあげて泣きつづけた。

「怖かったな……がんばったな……ごめんな……ありがとな」

耳許で繰り返される優海の囁きを訊くたびに、その温もりを感じるほどに、私の心は落ち着いていき、しばらくしたら涙も引いてきた。