「は? 何……」
「だって、凪沙、自分が死ぬって分かって生きてたんだろ。何月何日に死ぬって知ってんのに、普通に生活してたんだろ」

その声は、まるで自分のことのように苦しそうだった。

「死ぬ日が分かって生きるって、それってめちゃめちゃ怖いじゃん……。それなのに凪沙、誰にもなんにも言わずに、弱音吐かずに、ひとりで耐えてたんだろ。怖かったよな……。ごめんな、気づいてやれなくて」

優海の言葉で、初めて気がついた。

そうだ、私は怖かったのだ。

自覚した途端に、目頭が熱くなった。

そうだ、怖かった。

目が覚めたあの日、死んだときのことをしっかり覚えていて、そのときの苦しみをはっきり思い出して、心臓が破裂しそうなほどの激しい動悸に襲われた。

一方、心のどこかでは、悪い夢なんじゃないかと思っていた。

変な夢を見てしまっただけなんじゃないかと。

それでも、日々を過ごしていくうちに、記憶の通りの出来事が次々に起こっていった。

それはやっぱりデジャヴなんかではないと、改訂された後のテスト範囲を真梨に教えてしまったときに確信した。

私は確かに未来を知っている、と悟った。

私の記憶にあることは確実に起こるのだと。

期末テストで優海が赤点をとって夏の大会の試合に出られず、そのことを悔やんで泣きじゃくることも、私が溺れた子どもを助けて力尽きて死んでしまうことも、全て今から現実に起こるのだと。