優海が私を連れてきたのは、あの桜貝の砂浜だった。

自転車を停めて防波堤の階段を降り、浜に出る。

ふたり肩を寄せ合い、波打ち際に腰を下ろした。

優海は黙ったまま、私の手を自分の両手で包み込む。

私が泣き止み、話し出すのを待ってくれているのだろう。

低くなるに従って大きさを増していく夕陽を見ているうちに、涙がひいてきた。

寄せては返す波が、白い飛沫を私たちの足許に散らしている。

小さな宝石のような雫を見ていたら、自然と言葉が零れ落ちた。

「――死ぬの」

今度はちゃんと声になった。

波の音にも負けないくらいはっきりとした声だったと思う。

でも、優海はよく聞こえなかったのか、それとも聞き間違いだとでも思ったのか、「え?」と訝しげに私を見た。

私は深く息を吐いてから、彼の目を見てきっぱりと言った。

「私、もうすぐ死ぬの」

声が震えないか心配だったけれど、大丈夫だった。

どうやらもう覚悟は決まったらしい。