涙が一気に溢れだして、止めどなく流れる。

「――うあぁぁ……!」

堪えきれなくなって、喉から声が飛び出した。

「凪沙……」

泣きじゃくる私に、何も聞こえなかったらしい優海が驚いたように目を見開いた。

次の瞬間、強く抱きすくめられる。

大好きな腕に包まれる安堵感で、私の涙は一気に噴き出した。

優海の胸にすがりながら、声をあげて泣く。

でも、視界の端に映ったおばあちゃんの洗濯物が、私のなけなしの理性を刺激した。

「……場所、変えよう。ここじゃ、話せない」

嗚咽まじりに切れ切れに言うと、優海が私を抱きしめたまま頷いた。


「後ろ、乗って」

優海が自転車のサドルにまたがり、私を荷台に座らせた。

二人乗りはしちゃいけない、と中学で習ったけれど、どうか今日だけは特別に許してほしい。

私はもうこれ以上、自分の足で立っているのさえ難しかった。

歩くことももできないのに、自転車なんてこげるわけがない。

優海がいないと、どこにも行けない。


海に向かって自転車を走らせる彼の背中に、ぴったりと耳をつける。

いつの間にか時刻は夜に近づき、ずいぶん低くなった太陽が放つ光に夕焼けの気配を感じた。