「凪沙、大丈夫か?」

眉をひそめて優海が訊ねてくる。

「なんか元気ない。どうした?」

相変わらず、こういうときだけ鋭い。

私は「そう?」ととぼけて、

「お腹空いてきたからかな」

と答えた。

「それならいいんだけど……」

絶対に信じていなさそうな顔でつぶやいて、優海はまたゆっくりと歩き出した。


しばらくして、別れ道に着いた。

いくら自転車を降りて歩いたって、小さな町ではすぐに終わりがくる。

あっという間だったなあ、と思いながら、私は足を止めて優海を見た。

でも、私が「じゃあね」と口を開く前に、優海が「送ってく」と言った。

一緒に帰るとき、彼はいつも私を家まで送ろうとしていたけれど、わざわざ遠回りをしてもらうのも申し訳ないので毎回固く断っていたら、最近は言わなくなっていた。

それなのに、なんで今日に限って。

そんな言葉を飲み込んで、私は笑って言う。

「いいって。家すぐそこじゃん。優海疲れてるでしょ、早く帰ったほうがいいよ」

今度こそ「じゃあ」とはっきり言って、優海に向けて手を振った。

「やだ」

いつになく頑な声音で優海がつぶやく。

「送る」

彼がこうなったら、こちらが何を言っても聞かないのは分かっていたので、あっそ、と答えて家へ向かって足を踏み出した。