目尻にたくさんの優しい皺が寄る。

いつも私を包んでくれた笑顔だ。

ふいに目頭が熱くなった。

それを悟られないように、氷だけになったグラスを意味もなくあおる。

込み上げてきたものが収まってから、私はおばあちゃんに向き直った。

「おばあちゃん、ありがとね」

おばあちゃんは少し目を丸くして首をかしげてから、「どういたしまして」と微笑んだ。

きっとおばあちゃんは、ただの麦茶のお礼だと思っているだろう。

それは仕方のないことだし、それでいいのだけれど、少しもどかしかった。


与えられた時間を、残された時間を、できるかぎり有効に使おうと思っていた。

でも、それには条件も限界もあって、すべて思い通りにするというわけにもいかない。

もどかしいことばかりだった。

それに比例して、諦めていたはずなのに、執着と恐怖のようなものが自分の中に生じはじめているのを、私は確かに感じていた。

それでも、見て見ぬふり、気づかないふりをしていくしかない。

『運命の日』はもう、すぐそこにまで迫っていた。