「――なぎちゃん? どうかしたん?」

考え事をしていたせいか、手が止まっていたらしい。

おばあちゃんが心配そうに顔を覗きこんできた。

「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「どうしたん、具合悪いん?」
「ううん、全然元気。宿題あとは何があるかなーとか考えてたら上の空になっちゃった」
「そうね、そんならいいけどね」

まだ少し心配そうな表情を浮かべているおばあちゃんは、ふいに腰を押さえながら立ち上がった。

「暑いから頭がぼうっとするんかね。麦茶持ってこようかね」

いいよ、私が行くよ、と制止する前に、おばあちゃんはさっさと台所に入ってしまった。

「はい、どうぞ」
「いただきます」

ことん、と置かれたグラスの中には、琥珀色の麦茶と透明の氷。

グラスを持ち上げると、振動で氷がからころと鳴った。

その音だけで涼しい。

口をつけて一気に飲み干す。

しびれるほどの冷たさが喉もとを駆け抜けていった。

「あー、やっぱ夏は麦茶だね」

少しこぼれた口許を拭いながら言うと、おばあちゃんが笑った。