「なぎちゃん、今年は何を描くん?」

糊つけを手伝っているときに、おばあちゃんに訊かれた。

「うーん……どうしようかな」

前は何を描いたっけ、と考えてみるけれど、思い出せない。

どうせ私のことだから、いつものように思いつきで適当に描いていたのだろう。

神様なんて信じていなかったから、なんだっていいやと思っていたのだ。

でも、今度はちゃんと意味のあるものにしたい。


黙々と刷毛を動かして糊を塗りながら、考えを巡らせた。

そしてひとつのことを思いつき、それでいこうと決心する。

上手くいくかは分からないけれど、きっと伝わる、と信じることにした。

信じる者は救われる、のだ。


縁側に置いた蚊取り線香の煙が細くたなびき、懐かしいにおいがする。

部屋の片隅の扇風機から、生ぬるい風が運ばれてくる。

首筋をそよそよと吹いて、後れ毛が揺れるのを感じた。

座りこんだ脚に、畳の感触が涼しい。

暑いけれど心地よい、海辺の夏。

私にとっては、これがきっと――最後の夏だ。