「いらないわけないじゃん! むしろ凪沙の弁当が最優先に決まってんだろ! てか、持ってきた弁当だと足りないかもしれないから、途中でコンビニに買い行こうかなと思ってたくらいだし、余裕で完食だよ」
「マジで? どんだけ食べんの……」
「成長期だし、動くしな! いくらでも食っちゃうよ」
「ならいいけど。無理して食べすぎてお腹壊したりしないでよね」

優海は「大丈夫だって」と笑ってから、手首につけたミサンガと、弁当の包みを見比べた。

「凪沙が作ってくれた弁当食って、凪沙が作ってくれたミサンガつけてたら、俺もうスーパーマンなれるんじゃね? これはスリーポイントがんがん決まって、優勝しちゃうかもなー」

調子いいんだから、と思うけれど、上手くもない手芸と料理でそこまで喜んでくれるのは、単純に嬉しかった。

「ほんとありがとな! 凪沙大好き」

優海は私に抱きつき、マジで好き、大好きと繰り返した。

「はいはい、分かったから。ほら、着いたよ。集合遅れちゃうから行って」
「おう、行ってくる!」
「ん。がんばってね」
「ありがと、がんばる。じゃ!」

行ってらっしゃい、とひらひら手を振ると、その倍くらいの勢いで振り返された。

駆けていく優海の背中を見ながら、どうかいい試合になりますように、と心から祈った。