「なんだよー、凪沙いつの間に料理できるようになったん? 知らなかったー」
「まあ、なんとなく、料理くらいできたほうがいいかなって……高校生だし」
「そんで今日は俺のために作ってくれたってこと?」
「そりゃまあ、そういうことになるね」
「やべーっ、嬉しい!!」

今にも踊り出しそうなくらいの喜びようだった。

これだけ喜んでもらえるのなら、作ったかいがあったというものだ。

「あと、いちおう言っとくけど、もうひとつタッパー入ってるでしょ。そっちはベタだけどはちみつ漬けレモンね」

彼氏の試合に弁当とはちみつレモンを作ってくるなんて、本当にベタすぎて恥ずかしいけれど、優海はそれを笑ったりバカにしたりするような人ではない。

むしろ大喜びだった。

「わー、はちみつレモン! 初めてだ、美味そう! なあ、食べていい? 食べていい?」

私は呆れて肩をすくめる。

「だめに決まってるでしょ。こんな道端で飲み食いするなんて行儀悪い。会場に着いてからね」

優海ははーい、と少し残念そうに頷いた。

「ていうか、いらないならいらないって言ってくれていいからね。そんなでっかい弁当持ってきてるのに、私の弁当までいらないでしょ」

断りにくいだろうと思ってこちらから言ってみたけれど、優海は勢いよくぶんぶんと首を振った。