泣いて泣いて、泣き疲れて、やっと涙が枯れてきたとき、私はしゃくりあげながらひとりごとのように言った。

「神様なんか、大嫌い」

優海は何も言わずに、私の肩をぎゅっと抱いた。

心地よい体温に目を閉じる。

それでも怒りはおさまらなかった。

「神様は見てる、って言うけど、絶対ウソだ。だって、それならなんで、ああいうクズが死なないで、優しい人が死んじゃうの? おかしいよ。ちゃんとしてたら良いことがあるとか、悪いことしたら罰が当たるとか、全部ウソ。神様は人間のことなんか全然見てなくて、仕事さぼって幸福も不幸もただ適当にバラまいてるだけの意地悪な怠け者だよ」

怒りのままにまくし立てたけれど、やっぱり優海は同意してくれなかった。

私はひとつため息をついてから、そっと訊ねた。

「ねえ、優海。優海はどうして神様を信じられるの」

優海が裏切り者の親戚の家を出て鳥浦に戻ってきたころ、一度訊ねたことがある問いだった。

きっと優海は同じ答えをするんだろうと分かっていながら、もう一度訊ねた。

その答えが欲しいからなのかもしれない。

「信じる者は救われるからだよ」

案の定、優海はそう答えた。

「神様がいるかとか、正しいかどうかとか、どうせ俺の頭で考えたって分かんないし。信じてて悪いことはないんだから、とりあえず信じとこう、って思ってさ。俺めんどくさがりだから」

あはは、と彼は笑う。

「なにそれ。とりあえず信じるとか。優海はいっつもそうなんだから」

私は呆れて肩をすくめた。

「そんなんじゃいつか悪いやつに騙されちゃうよ。疑うことも覚えないと」

じゃないと、私が心配で仕方がないのだ。

でも、優海にはきっと、なんでも疑ってかかるなんて絶対にできないだろう、と分かってもいた。