思い出して、私はぺしりと優海の頭をはたいた。

「いてっ。なにすんだよー凪沙」
「なに自慢げに褒められてんの。優海、宿題あったこと忘れてたじゃん。昨日電話で私が言わなかったら、また池田先生に怒られてたでしょ」
「う……確かに」
「ははっ、それでこそ優海だよな」

面倒見のいい黒田くんは、忘れっぽい優海のことをいつも気にしてくれている。

今までずっと優海の世話係を自負してきた私としては、高校になってから突然その役割の一部を彼に取られたような気がして勝手に複雑な気持ちになってしまっていたけれど、『今』となってはそれがありがたい。

「……優海のことよろしくね、黒田くん」

ぽつりと言うと、彼は少し目を丸くした。

「どうしたの日下さん、改まって」

私は慌てて笑みを浮かべる。

「うん、なんていうか、これからもこいつの宿題のこととか気にしてあげて欲しいなと」
「ていうか、俺が気にするまでもなく、日下さんがいちばん優海の面倒見てない?」

黒田くんがおかしそうに目を細めた。

「そうだけど、黒田くんがいればさらに心強いっていうか?」
「ふうん? まあいいけど。じゃ、任せて」

にっこりと笑ってくれる黒田くんに、少しほっとする。