「ふー、まだ朝なのにすでに暑いなー」

優海が肩をあげて袖口でこめかみの汗を拭いながら、眩しそうに空を見上げてぼやいた。

墓参りを終えた私たちは、降り注ぐ陽射しの中を最寄りの駅へと歩いていた。

これから電車に乗って、試合会場の高校へ向かうのだ。

「ほんっと暑いね。朝の七時とは思えない。まあ、もうすぐ八月だもんね、当たり前か」

今日は特に、かんかん照りの上に湿気まであって蒸し暑く、少し歩いただけで汗がだらだらと滝のように流れ落ちてくるほどだ。

「こんな高温多湿な中で走り回るとか大変だねえ。熱中症にならないように気をつけなよ、優海。ちゃんと水分と塩分とってね」

優海は「おう」と頷いてから、

「凪沙が俺のこと心配してくれたー、嬉しい」

と笑った。

いつもしてるよ、と心の中で思ったけれど、恥ずかしくて口には出せなかった。


五分ほど歩くと、駅が見えてきた。

今日は平日なので、通勤のため電車に乗るらしいサラリーマンやOLさんが続々と駅の出入り口に吸い込まれていくのが見える。

ちょうどラッシュアワーだな、と思った。

普段は自転車で通学しているので、土日にしか電車に乗らないから、なんだか新鮮だった。