にこにこしながら店内の花を見渡したおばさんが、私に気づいて目を丸くする。

「あら! あらあら……もしかして優海くんの?」

しまった気づかれた、と恥ずかしさと気まずさに固まった私をよそに、優海のほうはいつもの笑顔で、「うん!」と大きく。

「俺の彼女! 凪沙っていうんだー、可愛い名前でしょ」
「あらあら、まあまあ」
「優しくて賢くてしっかり者で美人で可愛くて、最高の彼女なんだー」
「まあ、ラブラブなのねえ」
「えへへ、それほどでもー」

でれでれと呑気に頭をかく優海のおしりを軽く叩いて、私はおばさんにぺこりと頭をさげた。

「初めまして、日下凪沙といいます。いつも優海がお世話になってます」
「あらまあ、ご丁寧に。うちのほうこそ、いつも優海くんにお花買ってもらって助かってるのよ」
「そうですか……優海によくしていただいているようで、ありがとうございます」

また頭をさげると、おばさんが優しく微笑んで私の肩を撫でた。

「こんなしっかりしたお嬢さんと付き合ってるなら、優海くんも安心ね」

おばさんは微笑んで優海を見た。

私は返答に困って、軽く頭だけをさげた。

「あ、今から試合って言ってたわね。早くしなきゃね。さて、なんの花にしようしかしらねえ……」

店内を回りながら花を選び、新聞紙に丁寧に包んでくれるおばさんの手許を見ながら、私と優海はこっそりと目を合わせて笑い合った。