でも、華やかさのかけらもない服だけれど、ブラウスのふんわりとしたシルエットとか、ショートパンツの細かいチェック模様と裾の広がり方とか、誕生日におばあちゃんに買ってもらったスニーカーとか、一目惚れしたリュックとか、自分としては気に入っているものばかりなので、褒められたのは嬉しかった。

「そう? 地味とか思わないけどな。シンプルで大人っぽくて落ち着いてて、凪沙にすごく似合ってるよ」
「……ありがと」

優海はどうしてこんな照れくさいことを平然と言えるんだろう、といつも不思議に思う。

私には絶対にできない。

照れ隠しに、携帯電話のカメラを起動して写真を撮った。

優海の笑顔と、バス停の標識と、その向こうの青空と海。

「また撮った」と優海が笑う。

「凪沙、最近写真にはまってるな。一眼レフだっけ、そういうちゃんとしたカメラとか始めてみたら?」
「別に写真とかカメラが好きなわけじゃないから、いい」
「え、そうなの? そのわりには最近よく写真撮ってるよな」
「そう? なんとなく気が向いただけ。深い意味はないよ」
「ふうん?」

そのとき、ブルル、とバイブ音が鳴った。

優海の携帯電話だ。

部活関係の連絡がきたらしく、優海はぽちぽちとキーボードをタップして返事を書いている。

その間、私がまたぼんやりと海を眺めているうちに、向こうからエンジン音が聞こえて、バスがやって来た。

「優海、バス来たよ。乗ろう」
「おう」