ふざけてじゃれあいながら話しているうちに、バス停に着いた。

今日は、優海のバスケの試合の前にバスに乗ってある場所へ行くために、まだひと気のない早朝に待ち合わせをしていた。

バスが来るまでにはまだ五分ほどあったので、ベンチに並んで腰を下ろす。

潮風で錆びた金属製の脚が、ぎっと軋んだ。

優海がバッシュの紐を結び始めたので、私は堤防の向こうの海と空を眺める。

夜の名残のひんやりとした空気、肌に心地いい爽やかなそよ風、穏やかな海面とさざ波の音、清らかな朝の光、蝉の大合唱。

思わず目を細める。いい朝だ。

ぼんやりとしていたら、隣から視線を感じた。

何、と顔を向けると、優海がにんまり笑って、

「今日のカッコ、可愛いな」

突然の褒め言葉にびっくりしてしまい、すぐには反応できずに止まってしまった。

彼はそんな私に構わず、にこにこしながらこちらを見つめている。

「制服でも普段着でも凪沙はいつも可愛いけど、今日は特別可愛いなー」

「……はあ? 別に普通の服じゃん……むしろどっちかというと地味だと思うけど」

なんの変哲もないオフホワイトのブラウスと、グレーのショートパンツ。

黒のミニリュックを背負い、トートバッグを右手に持っている。

たくさん歩くので、足下は黒スニーカーだ。

女子高生らしさなんてどこにも感じられない、モノトーンの地味なコーデだ。

色があるのは、首にかけた桜貝のネックレスだけ。

こんな格好には、可愛いなんて言葉はまったく似合わない。