ここぞとばかりに予定をつめたせいもあり、夏休みの最初の一週間はあっという間に過ぎ去ってしまった。

今日は、バスケの大会の日だ。

「凪沙ー! おはよう!」

まだ明け方の気配も残る早朝五時だというのに、相変わらず元気いっぱいの優海が、ぶんぶん手を振りながらこちらへ走ってくる。

白いTシャツと膝丈のジャージに、大きなリュックを背負って、なんだか重そうな手提げ袋を持った上に、さらにバスケットボール三個が入ったバッグを肩からかけた、なんだか騒がしい格好だ。

「おはよ。荷物多いね、一個持つよ」

見かねて手を差し出すと、

「ありがと! でも大丈夫、全然余裕だから」

とあっさり断られた。

でも、さすがに見ていられなくて、手提げ袋を奪い取る。

腕が抜けるかと思うほどずっしりきて、中身を覗いてみると、見たことがないほど大きい水筒と、私が使っているものの倍くらいはありそうな弁当箱が入っていた。

少しショックを受けたのを顔に出さないようにして飲み込み、声をあげる。

「何このでっかい水筒! 弁当箱もでか!」
「二リットルの水筒だよ。これくらいないと夕方までもたないからさ」

それもそうか、と納得する。

何時間も動き回ればそれはお腹が空くだろうし、この真夏に運動すれば汗だくですぐに喉はカラカラだろう。

「お弁当は何、……どうしたの?」
「んー、自分で作ったやつと隣のおばちゃんが分けてくれたおかず、適当に詰めてきた」

並んで話しながら、近くのバス停に向かって歩く。

「へえ、料理してるんだ、偉いね」
「へへ。最近ちょっと料理楽しくなってきてさ、つってもまだ玉子焼きと目玉焼きとゆで玉子くらいだけど」
「玉子だけじゃん!」
「はは、玉子好きだから。けっこう上手くできんだぞ! 今度凪沙にも食ってもらいたいなー」
「えー、なんか怖いな、優海の作ったご飯とか。塩と砂糖とか間違ってそう」
「間違わないってー」
「ちゃんと手とか洗ってるか不安だし」
「わあ、ひでー、洗うよちゃんと!」
「ごめん、うそうそ。機会があったらご馳走してもらおうかな」
「やった! 食って食って」