「えー! うわー!」

優海が突如すっとんきょうな声をあげた。

誰もいない廊下に声が響く。

「ちょ、うるさ……」
「マジかー! 凪沙が俺にミサンガ作ってくれたー!!」

わざわざ言わんでいいバカ、と心の中で悪態をつく。

あまりの恥ずかしさに腹が立つけれど、せっかくこんなに喜んでいるところに水を差すのもかわいそうなので我慢した。

「ミサンガってあれだよな、切れたら願いが叶うってやつ!」
「うん、そうだよ」

昨日の晩、急に思い立って編んでみたものだ。

小学生のころ女子の間で広まり、好きな色の手芸糸を使って作ったものを友達どうしで交換するのが流行っていた。

中学になってからは、部活の試合前などに

優海をイメージして、赤と黄色とオレンジの三色糸を選んだ。

久しぶりだったからやり方を忘れていた上に、なかなかきれいに編めなくて、何度もほどいてやり直したので、夜中の二時までかかってしまったけれど、なんとか上手くできたと思う。

優海がずっと持っていても恥ずかしくないくらいには。

「マジか! なあ、どんな願いかけてあんの?」
「優海がバスケで思い通りのプレーができて試合を楽しめますようにって」
「おー、いいな!」
「自然に切れるまで、外したり切ったりしちゃだめだよ。そしたら願かけが無効になっちゃうから」
「了解!」