「よっしゃー、行くぞ」

優海が準備を終えて立ち上がったので、「途中まで一緒に行く」と言って、彼の後ろについて教室を出た。

「ねえ……あのさ」

周囲に誰もいなくなったタイミングを見計らって声をかける。

ん? と振り向いた顔を見た瞬間、心拍数が一気にあがった気がした。

やばい、どきどきする。緊張で喉がつまりそうだ。

私はごくりと唾を飲みこんでから、ポケットの中を手探りして、あるものを取り出した。

「これあげる」

決心の鈍らないうちにと、握った手をずいっと突きだす。

「何? お菓子?」

と首をかしげる優海の頬に拳をぐりぐり押しつけると、「なんだよー」と笑って私の手をつかんだ。

「どれどれ、何が出るかな~」

楽しげに言いながら私の手をとって指を開いた瞬間、優海が目を丸くしたまま硬直した。

沈黙に耐えられなくて、「びっくりしすぎ」と怒った口調で言ってみたけれど、頬が赤くなるのはどうしようもない。

「……えっ、えっ、え? 何これ、なんで?」

優海がやっと顔をあげて、唖然とした表情で私を見る。

「……ミサンガ。昨日作った」

答えた声は、やっぱりぶっきらぼうな可愛くないものになってしまった。

でも、これが私だからしかたがない。