それが災いしてか、その日、私はクラスの女子に『もう凪沙ちゃんとは遊ばない。おしゃべりもしない』と言われた。

理由を訊ねると、お母さんに『あの子は親がいないからちゃんとしつけられてない。何をするか分からなくて危ないから遊んじゃだめ』と言われたという。

怒りと悔しさと悲しさで胸がいっぱいになり、鳥浦に来てからずっと我慢していた涙が一気に溢れだして、私は号泣した。

それから授業が終わるまで保健室で泣きじゃくっていた私は、迎えにきた優海と一緒に帰路についた。

手をつないで歩く間、優海は何も聞かなかったし何も言わなかった。

家に着くころ、さすがに涙は枯れ果てていたけれど、泣いていたことを隠せそうもない顔ではおばあちゃんに会いたくなくて、『まだ帰りたくない』と優海に言った。

すると彼は『じゃあ海で遊んでいこう』と私の手を引いてこの砂浜に連れてきてくれたのだ。

そして、貝殻を拾い集め、勝負をすることになった。

でも、どちらのほうがよりきれいな貝殻を見つけられるか競争をしていたのに、あの桜色のきれいな貝殻を見つけた瞬間、優海は満面の笑みで『あげる』と私に差し出した。

『お母さんが教えてくれた。ピンク色の貝殻を拾ったら幸せになれるんだって』

幸せになれる貝殻を、彼は迷いなく私にくれたのだ。