「これ、ネックレスにしたんだな」

ふいに優海がそう言って、指先で私の首もとのチェーンを絡めとった。

しゃら、と金具がこすれあう音がして、金色の細い鎖が月光に煌めいた。

チェーンの先には桜色の貝殻のかたわれ。

「うん……身に付けれるように」
「いいな。俺のもそうしたい」
「えー? 優海には似合わなそうだな。ないない」
「ひど。おそろいにしたいのに」
「恥ずいわ」
「ははっ」

この桜貝のかけらを見つけたのは、貝殻拾いの遊びをしていたときだ。

その日、私は学校で同じクラスの女子から心ない言葉を吐きかけられて、ひどく傷つき落ち込んでいた。

私は五歳のときに母親に連れられて、父親の実家があるこの地にやってきた。

父親はその少し前に病気で亡くなっていた。

ひとりで娘を育てるのが不安だったのか、夫の母であるおばあちゃんに私を預け、そのまま姿を消した。

おばあちゃんは私に『そのうち帰ってくるよ』と言っていたけれど、口さがない親戚のおじさんやおばさんたちが『男と逃げたんだってね』『そもそも一人息子をあんな尻軽女と結婚させたのが間違いだった』とおばあちゃんに言っているのを私は何度も聞いていた。

そういう噂が回るのは早く、私は鳥浦のどこに行っても『男好きの母親に捨てられた可哀想な娘』で、『日下の親無しっ子』と陰で呼ばれているのをちゃんと知っていた。

いくら幼くても、周りからどんな目で見られ、何を言われているのか、敏感に察知するものなのだ。