全力で走って彼のもとに向かう。

足音に気づいた優海が振り返った次の瞬間には、勢いよく飛びついた。

「わっ」

優海が声をあげて私を抱きとめ、そのままバランスを崩して砂の上に転がる。

一瞬で髪も服も肌も砂まみれになった。

「あははっ」

優海が弾けるように笑い、私も彼の上で同じように笑う。

声をあげて笑ったのはいつぶりだろう、と思った。

「もーなんだよ急にー、びっくりしたー」

優海が砂まみれの私を抱きしめたまま覗きこんできた。

その顔にはいつものように柔らかい微笑みが浮かんでいる。

私が何をしても、何を言っても、どんなに振り回されても、ただ笑顔で受け入れてくれる優海。

私は両腕を彼の首に回してぎゅうっと抱きついた。

ふふ、と洩れる笑い声が上から聞こえる。

少し顔をずらして、彼の胸にぎゅうっと耳を押しつけた。

とく、とく、と規則正しく音を立てる心臓。

その間隔がいつもより少しだけ早いかもしれない。

こうやって優海の胸に耳を当てて鼓動の音を聞くのが好きで、寂しいとき、悲しいことがあったとき、昔からよくやっていた。