鳥浦の海岸は、岩場と砂浜が混在している。

岩場は危険なので子どもは近づくなときつく言われていたので、小さいころ海で遊ぶときはいつも砂浜で遊んでいた。

砂遊びの道具を持っていって砂の城を作ったり、波打ち際で水遊びをしたり、木の枝で砂に落書きをしたり、潮干狩りをしたり、流れ着いたガラス瓶や流木を拾ったり。


その楽しい思い出がたくさんつまった砂浜で、優海は私を待っていた。

まだこちらには気がついていない。

私はゆっくりと歩いて近づいていく。

さく、さく、と砂が鳴いた。

彼は波打ち際で佇んでいる。

本当に来るかどうか、いつ来るかも分からないのだから、座って待っていればいいものを、立って待っていたのだ。

バカな優海、とこっそりつぶやいた。


この浜は、流れ着いた貝殻が砕けた砂できている。

夜になって月の光を浴びると、その砂は白く輝き、幻想的な美しさを見せた。

この砂浜を見るたび、月の砂漠はこんな美しさだろうか、となんとなく思う。


月明かりの中に浮かび上がる、真っ白な砂漠の中の優海。

その視線の先には、藍色の空に浮かぶ白い月と無数の星、波間に銀色の月影を映す濃紺の海。


あまりにも寂しい光景で、私はもう歩くのをやめた。