絶対行かない、絶対行かない、と念じながら一日を過ごした。

行くもんか、行っちゃだめだ。自分で決めたことなんだから。

自分の部屋の畳の上に寝転び、天井をにらみつけながら、ずっと優海のことを考えていた。

優海のために、行っちゃだめだ。

私と別れるのが優海のためなんだ。

そう思っているのに、私は気がついたら桜貝のネックレスを胸に抱きしめていた。


時計を見ると、九時になるところだった。

窓の外の空は、すっかり真っ暗になっている。

夏とはいえ、海辺の町は夜になれば肌寒い。


優海はもうあの砂浜に行っただろうか。

ちゃんと上着を着ていっただろうか、寒くはないだろうか。

もう夏だから大丈夫に決まっている。

でも、海の近くは風が強い。

いや、風が強いくらいで死んだりしない。

気持ちがぐらぐら揺れているのを感じる。

気がつくと優海の待つ場所へ行く理由を探してしまっていて、慌ててそれを打ち消す、その繰り返しだった。