優海は黙りこんだ。

でも、視線を感じる。

まっすぐに私を見ている。

その眼差しの前では、私の口から出たどんな言葉も意味を失って、本当の気持ちが渦巻く心の中を見透かされているような気がした。

「……待ってる」

唐突な言葉の意味が分からなくて、少し顔をあげる。

優海は柔らかい笑みを浮かべて言った。

「明日の土曜日の夜、桜貝を見つけた浜で、待ってる」

は、と唇から息が洩れた。

「一日休んだら、凪沙の具合も良くなってるだろ」
「何言ってんの……行くわけないじゃん。私はより戻す気なんて……」
「凪沙が来るまでずっと待ってる」

遮るように言われて、私は口をつぐんだ。

「凪沙が来るまで絶対帰らない」

私はゆっくりと顔を覆って、呻くように呟いた。

「ずるいよ……」

だって、そんなふうに言われたら。

「うん」

優海は、知ってる、というようににっこりと笑った。