改札を抜けて駅の外に出たところで、優海に向かって手を突き出す。

「鞄、ありがと。もう具合良くなったから持てるよ」
「いいよ、家まで持ってくよ」

そう言って抱えなおす彼に向かって、首を横に振った。

「ちょうだい」
「……分かった」

渋々手渡された鞄を受け取り、肩にかける。

小さなロータリーを出て左に曲がり、私は黙々と歩き出した。

ついてくる優海の足音が聞こえたけれど、後ろは向かない。

海を見ながらしばらく歩くと、分かれ道まで来た。

右にいけば優海の家、左に行けば私の家。

横顔だけで振り向いて優海に言う。

「あとは大丈夫だから、ここで別れよう。付き添ってくれてありがと、助かった」

「家まで送るよ」

「いい。もう大丈夫、顔色もいいでしょ? てか、優海といるのみんなに見られたくないから、ここまでにして」

わざわざ早退までして付き添ってもらい、色々と優しくしてもらったのに、こんなに迷惑そうに冷たい言い方をして、本当に嫌なやつだ。

だから、優海。もう私のことなんか嫌いになってしまえ。

こんなやつ二度と優しくしてやるか、って見放していいんだよ。