優海はいつもこうだ。

バスでも電車でも、誰よりも早くお年寄りや身体の悪い人に気がついて、さっと席を譲る。

彼の中ではそれが当たり前のことだから、本当に当然のように席を立つので、譲られたほうも断れないほどだ。

この前も、優海とふたりで電車で出かけたとき、マタニティーマークをつけている妊婦さんを見つけて席を譲っていた。

私は気がついてもなかなか勇気が出なくて声をかけられなかったりするので、そういうところは本当に尊敬する。

「あっ、海が見えてきた」

私の目の前に立って、吊革にぶらさがりながら窓の外を見ていた優海が、嬉しそうに声をあげた。

私も振り向いて後ろを見る。

ひしめきあう建物の隙間から、青い海がちらちら覗いていた。

「すげー、きれーだなー」
「なんでそんなテンションあがってるの。海なんか毎日見てるじゃん」

おかしくなってくすくす笑いながら言うと、優海も「確かに」と笑った。

「でも、鳥浦でチャリ漕ぎながら見る海とはなんか違う感じして、新鮮だからさー」

「まあ、確かにね」

海はどこまでもつながっているはずなのに、どの場所から見るかで全然違って見えるから不思議だ。

鳥浦の海を見ると、いつも必ず、帰ってきた、これが私たちの海だ、と感じるのだ。


窓の外を見ながらしばらく電車に揺られて、十分ほどで乗り換えのある大きな駅に着いた。

手をつないでホームに出て、階段をのぼって降りて、隣のホームで鳥浦方面に向かう電車に乗り込んだ。