これは今だけ、体調が悪いんだから仕方がない、と誰にともなく心の中でつぶやく。

家に着いたら、もう一度ただの幼馴染に戻らなきゃ。

頭ではそう考えているのに、右手が勝手に優海の左手を握りしめた。

彼は何も言わずにそっと握り返してくれた。


ホームにはちらほらと電車を待つ人がいた。

タイミングよく急行列車がやってくる。

鳥浦までは一本では行けないので、途中の大きな駅まで急行で行き、そこで下りの普通列車に乗り換えて帰るのだ。

電車に乗り込むと、平日の昼間なのに、意外にも乗客が多かった。

ちょうど買い物やランチの時間だからだろうか。

見渡してみると、二人席に荷物を置いてひとりで陣取っている人もいて、空席は少ない。

それでも何とか奥の優先席の隣が空いているのを見つけた。

肩から肘までぴったりとくっつけて、ふたり並んで座る。

それだけでとても心が落ち着いた。


私たちは小さい頃からいつもこうやって並んでぴったりくっついていた。

身体のどこかをくっつけていないと落ち着かないほどにべったりだった。

よく周りの大人から、まるできょうだいみたいねと言われていた。