「あっちーなあ。凪沙、駅まで歩けそう?」
「……歩くしかないでしょ」
「いや、しんどいなら俺がチャリに乗っけてくけど」
「二人乗りは法律違反ですから」
「あははっ、さすが凪沙、真面目!」

そういうわけじゃない。

もしも警官に見つかったら、怒られるのは優海だ。

私のせいで優海をそんな目に遭わせるわけにはいかない。

「ゆっくり歩くなら大丈夫だと思う」

ここまで来たらもう帰るしかない、と覚悟を決めた。

ふたりで並んで校門を出る。

いつもは自転車で走る学校前の道を、並んで歩くというのは、なんだか妙な感じがした。

街路樹から蝉の声が降り注いでくる。

あまりの大音量が頭に響いてくらくらするけれど、木陰になっていて涼しいのは助かる。

でも、街路樹が途絶えた途端に、突き刺さるような陽射しとアスファルトから立ち昇るむわっとした熱気で、一気に体感温度が上がった。

汗が一気に吹き出してくる。

こめかみを伝う汗をハンカチで拭っていたら、急に視界が暗くなった。

「凪沙、暑いからそれ被ってて。まだ着てないから安心していいぞー」

優海の部活用のTシャツが頭から被せられていた。