「ちょっと待って、なんで優海まで帰んのよ! ひとりで大丈夫って言ってんじゃん。早く授業戻れ! 欠課になっちゃうよ。せっかくここまで皆勤なのに」
「へーきへーき、いーんだよ。ちゃんと担任の了解とってるから」
「は!?」
「具合悪いのに遠くまでひとりで帰らせるの危ないから、付き添ってやれって。体育の先生にも言っといてくれるって」
「はあ~……?」

あの担任、何考えてんだ。

私の顔も見ずに早退するのを了承して、しかも優海まで帰らせるなんて。

サボりのための口実だったらどうするつもりなんだ。

そこまで考えて、たぶん先生は私たちがサボって早退するような生徒じゃないと思ってくれたのだろうと気がついた。

ここまで私が真面目に優等生をやってきたツケがこんなところで回ってきてしまったわけだ。

いや、それだけじゃない。

優海は、勉強は不得意だし忘れ物もするけれど、授業は真面目に受けるし、何よりすごく素直で正直者だ。

先生は、優海が決して嘘などつかないことを分かっていて、付き添いで帰るのを認めてくれたのだ。

優海のことを信頼してくれているのだ。

そのことは嬉しいんだけど。

「さ、帰るかー」

優海はふたり分の荷物を抱えて歩き出した。

私も仕方なく後に続く。