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「凪沙、ちょっとここで待ってて」
優海はそう言うと、私を生徒玄関のパイプ椅子に座らせて姿を消した。
ぼんやりと上履きを見つめて待ちながら、なんで結局あいつの言うこと聞いちゃってるんだろう、と不思議になる。
昔から優海は、素直に見せかけて実は頑固なところがあって、普段は絶対に私の言うことに逆らわないくせに、ときどき言い出したら聞かなくなることがあるのだ。
今がまさにそのパターン。
こうなったら、私がなんと言おうと、こちらが優海の言いなりになるまで絶対に折れないことを、経験上知っている。
優海は五分ほどで「お待たせ」と帰ってきた。
なぜか私の鞄を持っているので首を傾げていると、
「担任に言ってきたよ」
「……何を?」
「凪沙が体調不良だから早退するって」
「はあ?」
早退したいなんて一言も言っていない。
何を勝手なことを、と怒りをぶつける前に、肩に手を当てて立ち上がらせられてしまう。
「具合悪いのに何十分もかけて自転車で帰るわけにいかないし、電車にしよう。あ、電車も厳しそうならタクシーでもいいって先生が言ってた。金の心配はすんなって、先生太っ腹だよなー」
「凪沙、ちょっとここで待ってて」
優海はそう言うと、私を生徒玄関のパイプ椅子に座らせて姿を消した。
ぼんやりと上履きを見つめて待ちながら、なんで結局あいつの言うこと聞いちゃってるんだろう、と不思議になる。
昔から優海は、素直に見せかけて実は頑固なところがあって、普段は絶対に私の言うことに逆らわないくせに、ときどき言い出したら聞かなくなることがあるのだ。
今がまさにそのパターン。
こうなったら、私がなんと言おうと、こちらが優海の言いなりになるまで絶対に折れないことを、経験上知っている。
優海は五分ほどで「お待たせ」と帰ってきた。
なぜか私の鞄を持っているので首を傾げていると、
「担任に言ってきたよ」
「……何を?」
「凪沙が体調不良だから早退するって」
「はあ?」
早退したいなんて一言も言っていない。
何を勝手なことを、と怒りをぶつける前に、肩に手を当てて立ち上がらせられてしまう。
「具合悪いのに何十分もかけて自転車で帰るわけにいかないし、電車にしよう。あ、電車も厳しそうならタクシーでもいいって先生が言ってた。金の心配はすんなって、先生太っ腹だよなー」