バカな優海。

知らないよ、いつかひどい目に遭っても。

私なんかに近づいてしまったら、きっとすごくすごく苦しい思いをする。

「……凪沙?」

顔を覗きこまれて、涙腺がずいぶん緩んでしまっているのを自覚した。

両手で顔をこすり、「もう大丈夫」と手を振ってゆっくりと立ち上がる。

「早く着替えなきゃ遅れちゃう。行こう」
「うそだ。まだ顔色悪いじゃん」
「気のせいだよ。てか、ほっといて? うちらもうただのクラスメイトなんだから、馴れ馴れしくしないでよね」

わざと傷つける言葉を選んで言ったのに、優海は顔色ひとつ変えない。

「ただのクラスメイトでも、具合悪そうならほっとけないって」

そうだ、優海はそういうやつだった。

「……めんどくさいなあ、もう」

きつく眉を寄せて大げさにため息を吐き出してから、肩をすくめてみせる。

「じゃあ、保健室行くから。あ、ひとりで行けるからね。あんたは授業行きなよ、サボっちゃだめだからね」

そう言って立ち去ろうとしたのに、頭痛のせいか目眩がして、少しよろけてしまった。