突然、なんでそんなに優しいのよ、と叫びたくなった。

あんなにひどいことした私に、どうしてそんなに優しくできるの、と詰りたくなった。

どうしてあんたはそんなにバカなの。どうして怒ったり恨んだりしないの。

素直にもほどがある、純粋にもほどがある。

大切なものを奪った神様を、それでも信じている優海。

突然一方的に別れを告げた私に、それでも優しくする優海。

どうしてこの人はこんなに綺麗なんだろう。

こんなに綺麗な心で、こんなに残酷な世界を、本当に生き抜くことができるのだろうか。

いつかとんでもなく酷い目に遭って、もう二度と立ち直れないくらい傷つけられて、ぼろぼろになってしまうんじゃないだろうか。

それでもきっと優海は、今みたいな透明な笑顔を浮かべるんだろう。

でも、そんな思いもそんな顔もさせたくないのだ。

だから、これ以上優海が悲しむことのないように、彼から嫌われることを、彼から離れることを決めたのに。

そんな私の血の滲むような努力を軽々と蹴っ飛ばして、優海はなんでもないように私を追ってきてしまうのだ。