「凪沙」

優しい光が天上から突如降ってきたような気がした。

ゆっくりと顔をあげる。

確かめなくたって、声の主が誰なのかは分かりきっていたけれど。

「……ゆ、う」

かすれた声で呼ぶと、優海はうん、と微笑んだ。

なんでこんなところに、と訊ねようとしたけれど、うまく声にならなかった。

「大丈夫か? 体調悪い?」
「……平気。休憩してただけ」

我ながら下手な言い訳だった。

案の定、優海はちっとも信じていない様子だ。

普段は何も疑わずになんでも無条件に信じてしまうくせに、こういうときばっかり。

そんな不平もうまく言葉にできずにいると、優海の手がそっと私の額に当てられた。

温かい手。

ずっと私のもので、これからも私のものだと思っていた手。

その手を、ぱしんとはねのけた。

優海は一瞬動きを止めたけれど、何事もなかったかのように口を開く。

「熱はなさそうだけど、これから出そうな顔してる」
「……ふ。なにそれ」

思わず笑ったけれど、優海は真剣だった。

「だって凪沙、熱出す前、目の周りが赤くなんじゃん。だから見れば分かるよ」

これだから幼馴染は嫌だ。

私の弱点を全て知っている優海の目をごまかすのは、すごく難しい。

「保健室行こう」
「……やだ」
「なんで」
「ちょっとだるいだけだもん。行ったって追い返されるよ」
「でも凪沙、いっつも具合悪いの無理して悪化させるじゃん。早めに休ませてもらおう、な?」