まだ付き合いはじめたばかりで、砂浜をふたりで歩いていたときにふいに優海が並んで距離をつめてきて、『手、つないでいい?』と訊ねてきた。

胸が破裂してしまうんじゃないかと思うほどどきどきしていたけれど、平然とした顔で『別にいいけど』とそっけなく答えたのを覚えている。

恥ずかしかったのだ。

優海は寒さのせいで赤く鼻をこすりながら『やった』と笑い、そっと私の右手を握った。

その瞬間、寒さに凍えて冷えきっていた指先が、太陽のような温もりに包まれた。

『優海の手あったかいね』
『凪沙のためにあっためといたから』

優海はポケットに忍ばせていたカイロで手を温めておいたらしかった。

それ以降優海は、これまでの三年間、冬場に手をつなぐときには必ず温めてから私に触れる。

面倒じゃないのと訊ねたら、冷たいとびっくりするだろ、と笑って答えた。