海を見ながら歩いていたら、突然、右手が温かくなった。

見ると、いつの間にか優海が隣を歩いている。

優海の手あったかいね、と私が言うと、凪沙のためにあっためといたから、と彼は笑った。

そこで目が覚めた。

外はもう明るかったけれど、私は枕を抱きしめたまましばらく動けなかった。


あれは中学生のとき、優海と再会してから初めて手をつないだときのことだ。

子どものころはよく手をつないで歩いていたけれど、小学生になるとあまりつながなくなっていた。

そして優海がしばらく鳥浦を離れていて、中学で戻ってきて付き合いはじめたとき、数年ぶりに手をつないだのだ。

それは秋の終わりごろのことで、冬が訪れるのが早い海辺の町では、すでに凍えるほどに冷たい風が吹いていた。