そんな夏の景色を見ながら、優海と並んで自転車を走らせるのが大好きだった。

でも今はもう、彼は隣にいない。

いつも優海が隣を走っていたから、ぶつからないように左側に寄って走るのが私の癖になっていた。

ぽっかりと空いてしまった右側を、どうしていいか分からない。

今までの人生でいちばんの喪失だった。

父親が死んだあと母親が夫の実家に私を置き去りにして姿を消した、あのときよりもずっとずっと大きい、広大な荒野の真ん中で取り残されてひとり立ち尽くしているかのような喪失感と脱力感。

でも、これは私が選んだことだ。

優海のためとはいえ、私の選択のせいで彼にもきっと同じような思いをさせてしまっている。

だから、私は悲しんだり寂しがったりする資格はない。

耐えるしかない。

ただ、ひとりで走る学校までの道のりは、信じられないほど長く感じる。

耐えがたい時間を少しでも早く終わらせたくて全力で自転車を漕ぎつづけ、今までより十分も早く学校に着くようになってしまうくらいに。