だめだ、気を引き締めないと。おばあちゃんに心配をかけるなんて、最悪だ。

誰にも何も気づかれないように、全てを秘密裏にやり遂げるつもりだったのに、私が弱いから、色んな人に訝しまれている。

こんなんじゃだめだ。あと少しなんだから、がんばらなきゃ。

これ以上、綻びを見せないように、いつも通りにしていないと。

気持ちが落ち着いてから、Tシャツを脱いでセーラー服を着て、靴下もそろえる。

姿見の前で全身をチェックして、部屋を飛び出して「行ってきまーす」と廊下を駆け抜けた。

玄関のひさしを出た途端、射すような光が降り注ぐ。

眩しさに目を細めながら空を仰ぐ。

もう七月も中旬、景色はすっかり真夏の色だ。

自転車に乗って、海沿いの国道を疾走する。

左側の海は、無数の波ひとつひとつが光を反射して白く煌めき、直視できないほどに眩しい。

春のぼんやり霞んだ空を映す朧ろげな海、秋の透明な空気に映える海、冬の荒く厳しい海、どれも美しいけれど、私はやっぱり夏の海がいちばん好きだ。

ただひたすらに青い海、果てしなく広い空、くっきりと浮かび上がる水平線、圧倒的に明るい太陽と、容赦なく降り注ぐ光。

混ざりけなく純粋に澄みきった景色。