「おばあちゃん、行ってくるね」

居間で食後のお茶を飲んでいる背中に声をかけると、おばあちゃんが「いってらっしゃい」と振り向いた。

その顔が驚いたように目を見開く。

「なぎちゃん……? その格好はどうしたね」
「え?」

戸惑いがちにつぶやかれた言葉に、私はぱっと自分の身体に目を落とす。

「あっ!」

思わず声をあげてしまった。

部屋着のTシャツに制服のスカート、右足にはワンポイントの入った紺の靴下、左足には黒いラインの入った白ソックスという、むちゃくちゃな格好をしていたのだ。

「あははー、セーラー服に着替えるの忘れてた……。靴下もやばいね、寝ぼけてたのかなー」

笑いながら言ったけれど、おばあちゃんは笑ってくれなかった。

「どうしたんね、なぎちゃん。最近おかしいよ。昨日は靴下履かんと外に出るし、おとといはお弁当忘れていったし、その前も学校に忘れ物しとったよね」
「ひゃー、私のミスを列挙しないでー」

ごまかすようにおどけてみせたけれど、おばあちゃんの表情は変わらない。

「しっかり者のなぎちゃんらしくないよ。何かあったんね?」
「あはは、ないない、何もない。ただ、ほら、夏休み前だから気が抜けちゃってるのかもね。気をつける」
「………」

必死に言いつくろう私を、おばあちゃんは全く納得していない様子で眉を寄せて凝視している。