チャイムが鳴って、授業が始まった。

優海は真ん中の列のいちばん前の席。

席替えくじを引いた瞬間、最悪だー寝れないじゃん、と騒いでいた。

でもそれが空元気だと、私にはすぐに分かった。

彼は、部活で疲れて授業中にぼんやりとしてしまうことはあるけど絶対に寝たりしないし、前の席だと眠くなっても気が引き締まるからいい、といつも言っていた。

私と別れたことでみんなに心配をかけたくなくて、ことさら元気に振る舞っていたのだ。

分かっていたけれど、もちろん私は何も言わない。

これから先は、優海とは必要最低限の会話しかしないと、私は決めているのだ。

ぼんやりとそんなことを考えているうちに、知らぬ間に時間が過ぎて、授業も終わりに近づいていた。

教科書は全然ちがうページを開いているし、ノートには一文字も書いていない。

シャーペンの芯も引っ込めたままだ。

最近こんなことばかりだ。

まったく授業に身が入らない。

後ろの席だし、今まで真面目にやってきていたから、先生に怒られるようなことはないけれど、自分でもどうかと思うほど集中力がなくなってしまっている。

でもまあいいか、と思う。

もう勉強したって意味がない。

もう私には、勉強をがんばる理由がない。

ただ日常をやりすごして、時が経つのを待つだけだ。

『運命の日』が来るのを待つだけだ。