優海が何も答えず、微動だにしないので、こんな言葉では足りないのかと思い、さらに言い募る。

「優海ってバカだし、能天気すぎるし、嫌気が差しちゃった。ていうか私たちって合わないと思わない? 性格も趣味も全部正反対じゃん、そもそも付き合ったのが間違いだったん……」
「そんなこと言うな!」

優海の悲痛な叫びに、私の言葉は遮られた。

こんな声は聞いたことがなくて、『あのとき』にさえ聞いたことがなくて、私は驚きのあまり口を開いたまま沈黙した。

「そんなこと言うなよ……間違ってたなんて、嘘だろ。だって、だって……今までずっと……」

彼はそこで言葉につまってしまったけれど、何が言いたいのかは分かった。

私たちは一度もケンカをしたことがないし、ずっと友達にからかわれるくらいに仲が良かったし、それに私たちはお互いにとって特別だった。

どちらも相手のことを特別な存在だと思っていると、お互いに分かっていた。

お互いのいちばんつらくて苦しかった時期に、いちばん近くにいた存在だから。

だから私と優海は特別な絆で結ばれているはずだと、だから離れるなんてありえないと、優海は言いたいのだ。

でも。

「……しつこいなあ。うざい。私が別れたいって言ってるんだから、もう終わりでしょ。あんたがどう思ってるとか、関係ないから。じゃ」