唖然としている優海に、「それじゃ」と手を振って玄関を出た。

「――ちょっ、待てよ、凪沙!!」

途端に後ろから腕をつかまれる。

私はあえて振り向かずに、前を向いたまま淡々と告げる。

「話はもう終わったから、帰る。邪魔しないで」

「は? は? は? や、なんで? なんで急にそんなこと言い出したんだよ」

腕をつかむ手にぐっと力がこめられる。

痛みに思わず一瞬手を引くと、優海が「ごめん」と力なく言って手を離した。

その隙に帰ろうとしたけれど、次の瞬間には目の前に回り込まれて道を阻まれてしまった。

「――凪沙!!」

今度は私の両肩をつかみ、優海がすがりつくような声で私の名前を呼んだ。

私は何も答えずにただ見つめ返す。

傘も差さずに追いかけてきた彼は全身を雨に打たれ、髪も服も身体に貼りついて、まるで海に溺れた子どものようだった。

こんなに濡れてしまったら、風邪を引いてしまうかもしれない。

せっかくテストを頑張って夏の大会に参加できることになったはずなのに、体調不良で出られないなんてことになったら意味がない。