「こんばんは」

その晩私は、優海が部活から帰った時間を見計らって彼の家のチャイムを鳴らした。

天気は夕方よりもさらにひどくなり、道路に打ちつけ跳ねあがる雨で視界が白くぼやけるほどだった。

暗い海にも激しく雨が降り注ぎ、高い波と雨の跳ねた飛沫で水面は白く泡立っていた。

濡れながら帰ってきた私を見ておばあちゃんが驚いていたので、今度はちゃんと傘を差して歩いて来た。

「――え、凪沙?」

私がわざわざ玄関から、しかもチャイムを鳴らして、そのうけ夜に訪問するなんて初めてのことなので、ドアを開けて私を見た瞬間、優海は鳩が豆鉄砲でも食らったような顔になった。

でも、次の瞬間には満面の笑みで嬉しそうに首をかしげる。

「わー、びっくりした。どしたん、こんな時間に。あ、急に俺に会いたくなったからとか? はは」
「いや……話が、あって」