幼稚園の頃に友達になってから十年ちょっと、中一の半ばから付き合いはじめてそろそろ三年。
いつも優しいし、大事にしてくれるし、会って話すと楽しいし、良い彼氏なんだけれど、私のことを好きすぎて面倒くさいところが多々あるのが珠に傷だ。
「なにぼーっとしてたんだよ、凪沙。珍しい。早くしねーと遅刻するぞ」
「別に何もー?」
適当に受け流しながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる優海の腕をほどいて自転車のハンドルに手をかけた。
またがってペダルに足をのせ、さっさとこぎ始める。
すると優海が焦ったように「あ、待って待って」と置き去りにしていた自転車までダッシュで戻り、勢いよく飛び乗って追いかけてきた。
その間に私はどんどんスピードを上げる。
「凪沙ー、置いてかないでー! 寂しくて死んじゃうぞ俺!」
優海の慌てぶりがおかしくて、ふふっと小さく笑ってしまう。まるで子犬かなにかみたいだ。
追いかけてくる優海の自転車の音を聞きながら、私は全力でペダルをこいだ。
海風にさらされて色褪せた古い木造住宅が密集した細い路地。そこを抜けると、海沿いの国道に出る。
一瞬にして視界が明るくなった。
目の前に広がる海の青、その上に覆いかぶさる大空の水色、もくもくとふくらむ入道雲の白、住宅地の背後に迫る山々の緑。
三百六十度、夏色だ。
夏ってどうしてこんなに全ての色がくっきり鮮やかになるんだろう。
いつも優しいし、大事にしてくれるし、会って話すと楽しいし、良い彼氏なんだけれど、私のことを好きすぎて面倒くさいところが多々あるのが珠に傷だ。
「なにぼーっとしてたんだよ、凪沙。珍しい。早くしねーと遅刻するぞ」
「別に何もー?」
適当に受け流しながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる優海の腕をほどいて自転車のハンドルに手をかけた。
またがってペダルに足をのせ、さっさとこぎ始める。
すると優海が焦ったように「あ、待って待って」と置き去りにしていた自転車までダッシュで戻り、勢いよく飛び乗って追いかけてきた。
その間に私はどんどんスピードを上げる。
「凪沙ー、置いてかないでー! 寂しくて死んじゃうぞ俺!」
優海の慌てぶりがおかしくて、ふふっと小さく笑ってしまう。まるで子犬かなにかみたいだ。
追いかけてくる優海の自転車の音を聞きながら、私は全力でペダルをこいだ。
海風にさらされて色褪せた古い木造住宅が密集した細い路地。そこを抜けると、海沿いの国道に出る。
一瞬にして視界が明るくなった。
目の前に広がる海の青、その上に覆いかぶさる大空の水色、もくもくとふくらむ入道雲の白、住宅地の背後に迫る山々の緑。
三百六十度、夏色だ。
夏ってどうしてこんなに全ての色がくっきり鮮やかになるんだろう。