時刻表を確認すると、どうやらこの路線は二時間に一本しか走らないようで、次のバスが出るのは二十分後の午後三時ちょうど。

乗車予定の路線バスは私が昔住んでいた家の方まで行くらしく、宿への道はそれより四つ手前のバス停で下車となる。

私はスマホで地図と乗り換え案内を見直してから、私以外には待ち人のいないバス乗り場の冷えたベンチに腰を下ろした。

八年ぶりの故郷。

この辺りは旅行と引っ越しの際に訪れる程度だったので、あまり懐かしさはないけれど、記憶に残る景色と大きく変わっていなくて安心する。

緑溢れる穏やかな自然と、濁りのない清んだ空気。

背の高いビルに囲まれて切り取られた小さな空ではなく、どこまでも広がるような青空を見上げて深呼吸する。

ふわりと白い息が冬の空気に溶けた。

思えば、あれだけナギとは仲良くしていたのに、ナギの家には遊びに行ったことがなかった。

うちにも来たことはないし、そもそも待ち合わせして遊ぶことはほぼなかった気がする。

ナギの家も私の家も家族が皆働いていたから、放課後はそのまま夕方まで保育園や学童に預けられていた。

その為、待ち合わせなんて必要はなく、園内や学校内で一緒に遊んで過ごしていたのだ。

そしてそれは、もうひとりの幼なじみである男の子、ヒロも同様だった。