今日は雨だから、チョコをもらいにいけないや。
きっと、ウソツキさんもいないだろうし。
 
十月下旬。
靴を履き替え、校舎の昇降口で折りたたみ傘を開きながら思う。

最近毎日のようにマンションに通っていたから、まっすぐ家に帰るのがなんとなくもったいないような気がする。

「種田さんて、帰宅部だっけ?」
 
傘を広げた私の横に、ひょいっともうひとつ紺の傘、そして男の子が出てきた。

「大橋くん」
 
急な登場にちょっとびっくりしたけれど、大橋くんだとわかり、ホッとする。

「うん、帰宅部だよ」
「ちょうどよかった。一緒に帰ろうと思って追いかけてきたんだ」
 
なんでそんなにさわやかに、はずかしげもなく言えるのだろう、大橋くんは。

私は内心動揺しながらも、
「え? だって部活は?」
と尋ねる。

大橋くんは、たしかサッカー部のはずだ。