「種田美亜さん」
 
呼ばれたフルネームに伏せていた目をあげ、ウソツキさんを見る。

「好きだよ」
 
風がウソツキさんの髪を揺らした。
私の髪も同方向へ幾筋かの束になって流れる。

姿勢も変えずに、静かに、でもはっきりとそう言ったウソツキさんは、なぜか笑っているのに泣きそうな顔に見えた。

「……信じません」
 
私は、ひと言そう答えた。
じりじりと、くやしさと歯がゆさと、それを上回る悲しさが上ってくる。

ウソツキさんは、なおも表情を変えずに、私を見つめている。

「あのさ、俺、すっごく考えた上で言ってるんだけど」
「信じないっ!」
 
思わず力んで大きな声が出た。
膝の上のカバンをぎゅっと握る。胸の痛みが最大になって、それを吐きだすように続ける。